青志社

一坂太郎/著 
『暗殺の日本近現代史』

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暗殺の日本近現代史
一坂太郎/著
『暗殺の日本近現代史』
幕末維新から令和の時代まで−−。
ニッポンの近現代の血塗られた暗殺事件のリアルと三島由紀夫の「暗殺論」。

発行日: 2023年9月22日発売
定価: 本体1500円+税
サイズ: 四六判並製
ページ数: 264ページ
ISBN: 978-4-86590-160-3

【内容】
秘蔵写真55点掲載!
人間社会の中で暗殺が絶滅する日など訪れるのだろうか



 安倍晋三銃撃の瞬間を、たまたま一般人が撮影しており、その生々しい映像はたちまちネットやテレビで世界中に流れて、見る者に大きな衝撃を与えた。そして、かつての日本は「テロ国家」だったが、それは現在進行形でもあると、思い知らされた。
 現代において、テロや暗殺は「悪」だと決められている。だから「テロ反対」「暗殺許すまじ」なとと言えば、手っ取り早く「正義」側に立てるという便利さがある。(略)
武士階級が無くなった近現代でも、暗殺事件(未遂も含む)がたびたび起こるのはなぜたろう。
 現代では大っぴらに、暗殺の肯定など出来ない。岸信介が襲撃された時、作家の三島由紀夫は暗殺を堂々と肯定する発言をしているが、いまなら非難を受けそうだ。
 果たして、人間社会の中で暗殺が絶滅する日など、訪れるのだろうか。表向きは否定したところで、人々の心の中には完全に否定し切れない、何かがある気がしてならない。
 暗殺を行った者に対する共鳴も、決して消えてはいない。それどころか、すべてではないにしろ、小説・マンガ・映画・演劇、あるいはゲームの世界では、暗殺者はヒーロー扱いである。暗殺者として散った者たちの墓前祭も、各地で行われている。幕府政権の崩壊に役立った暗殺者たちを、明治政府は顕彰(けんしょう)した。安倍晋三銃撃事件にしても、百年後の日本でどのように評価されているのかは、誰にも分からない。

 本書は、決してテロや暗殺を肯定するものではない。しかし、暗殺の歴史は封印して良いものではない。「日本暗殺史」に新たな一ページが加わってしまった昨今ならば、なおさらである。安倍銃撃事件から一年余り経ったいま、善悪ではなく、なぜ、この国で暗殺事件が起こり続けたのか、どのように語り継がれて来たのかを考える一助はなればと願いながら、書き進めたい。

「序章」より

目次:

序章 安倍晋三元首相銃撃事件

第1章 幕末維新期の暗殺

一 開国と暗殺
水戸発の尊攘論
開国した日本
外国人に対するテロ
外国公使館まで襲われる
テロの連鎖

二 幕府高官を暗殺
吉田松陰の暗殺論
松陰の老中暗殺計画
「安政の大獄」で処刑された松陰
桜田門外の変、前夜
大老井伊直弼の横死
坂下門外の変

三 暗殺の舞台は京都へ
土佐による暗殺始まる
殺人ショーと化す
言路洞開
坂本龍馬暗殺

四 新政府に対する不満
パークス襲撃
信義と公法
政府高官の暗殺
赤坂喰違事件
大久保利通暗殺
島田一郎と憲政碑

第2章 明治時代の暗殺

一 板垣退助暗殺未遂
岐阜での演説
相原尚●(ふみ)という刺客
「板垣死すとも」の真偽
板垣に謝罪した刺客

二 森有礼暗殺
憲法発布の朝の凶事
暗殺者西野文太郎への非難の声
森有礼に関する噂
西野文太郎の経歴
西野文太郎の墓

三 大隈重信暗殺未遂
条約改正問題
霞ケ関の変
刺客来島恒喜のこと
玄洋社が有名に
神格化されるテロリスト
来島恒喜を絶賛する大隈

四 大津事件
ロシア皇太子の遭難
京都に急行した明治天皇
畠山勇子の自害
津田三蔵の処罰をめぐり

五 李鴻章暗殺未遂
日清講和談判始まる
戦争遂行を望む

六 閔妃暗殺
三国干渉に屈した日本
王城でクーデター

七 星亨暗殺
東京市庁舎内での惨劇
テロが必要と説く中江兆民

八 伊藤博文暗殺
韓国統監伊藤博文
安重根
伊藤博文の国葬
伊藤の死と日韓併合
博文寺の建立

第3章 大正時代の暗殺

一 安田善次郎暗殺
実業界の巨頭
なぜ、安田を殺すのか
朝日平吾のおいたち
現代に生きる朝日平吾

二 原敬暗殺
テロの連鎖
東京駅での惨劇
無期懲役となった中岡艮一

三 甘粕【あまかす】事件
相次ぐ白色テロ
虐殺され井戸に捨てられる
甘粕のその後

四 虎ノ門事件
摂政宮が襲われる
難波大助の少年時代
母の死
大助が使った銃
大助の墓は築かれず
社会運動家堺利彦のテロ観

第4章 昭和の暗殺事件(戦前)

一 山本宣治暗殺
山宣の愛称で親しまれる
山宣、刺される
黒田の末路とその黒幕

二 浜口雄幸襲撃
男子の本懐
佐郷屋留雄の殺意
新しき村から愛国社へ
佐郷屋のメッセージ

三 朝鮮人愛国団による抗日テロ
昭和天皇をターゲットに
上海での抗日テロ

四 血盟団事件
井上準之助・団琢磨暗殺
リーダーは井上日召
なぜ、暗殺に走るのか

五 五・一五事件
犬養毅を暗殺
内閣総辞職

六 永田鉄山斬殺
「統制派」対「皇道派」
相沢三郎という男

七 二・二六事件
総理官邸襲撃
奉勅命令が発せられる
首謀者の処刑
天皇を叱責する磯部浅一
刑死者の墓など

5章 昭和の暗殺事件(戦後)

一 河上丈太郎襲撃
政治の季節
戦後初の政治テロ

二 岸信介襲撃
岸信介の不人気
ついに刺される
岸を刺した理由
つづく首相襲撃

三 浅沼稲次郎刺殺
十七歳のテロリスト
山口二矢の人生観
神格化される二矢

四 嶋中事件
天皇を茶化す
『風流夢譚』という小説
右翼たちの決議
嶋中社長宅が襲われる
赤尾敏の談話

五 娯楽の中の暗殺
二・二六事件が映画に
メロドラマ化する二・二六事件
「日本暗殺秘録」という映画
監督と脚本家の思い

六 三島由紀夫の暗殺論
暗殺は民主主義の副産物
行動した作家

おわりに


【著者紹介】

一坂太郎(いちさか・たろう)
昭和41年(1966)兵庫県芦屋市に生まれる。大正大学文学部史学科卒業。現在、萩博物館特別学芸員などを務める。最近の主な著書に『暗殺の幕末維新史』(中公新書)、『久坂玄瑞』(ミネルヴァ書房)、『吉田松陰190歳』(青志社)、『わが夫坂本龍馬』(同)、『フカサクを観よ』(同)、『坂本龍馬と高杉晋作』(朝日新書)、『高杉晋作』(角川ソフィア文庫)、『昭和史跡散歩 東京篇』(イースト新書)などがある。『英雄たちの選択』などテレビ出演、講演も多い。日本文芸家協会員。


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