青志社

渡部昇一/著
『正義と腐敗と文科の時代』

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正義と腐敗と文科の時代
渡部昇一/著 
『正義と腐敗と文科の時代』
すべての人が面白がる話題はただ一つ、人間である。

発行日: 2023年11月16日発売
定価: 本体1800円+税
サイズ: 四六判並製
ページ数: 416ページ
ISBN: 978-4-86590-167-2

【内容】

代表作「正義の時代」「腐敗の時代」「文科の時代」の極上のエッセーをセレクトし、1冊にまとめた待望の新刊!

かもしだされる学の薫りと清爽で熱い人間観察
これぞ渡部昇一の時代

まえがき 早藤眞子 渡部昇一長女
解説 谷沢永一 関西大学元名誉教授

本年(2023年)、父の七周忌(帰天後満六年)を無事、執り行うことができました。
この六年間、父の遺した仕事の価値を改めて認め大切に思い、再び編んで読者の皆さまに届けて下さる方々が絶えず、おられました。何とありがたく幸運なことかと、深い感謝の念に満たされます。
この度、ここに収められたエッセイは通称初期三部作と呼ばれた『文科の時代』1974、『腐敗の時代』1975、『正義の時代』1977(いずれも文藝春秋)の三作から『「時代」を見抜く力』2020(育鵬社)の中に収まらなかったものを主に、今、正に読まれるべきと痛感されるものを再び納めたものであります。
また、谷沢永一先生が1990年代前半に、これら三部作が一冊ずつ、PHP研究所から文庫本として再版されるにあたり、三作全部に解説を寄せて下さった―これも三編とも一緒に納めました。

この時代の父のエッセイは、現代の日本のある事象や問題を話題にしながら、その事象や問題の「真実の姿」を浮かび上がらせるために、歴史の縦軸(垂直)と比較文明の横軸(水平)でジワリジワリと迫って対象に光を当てていきます。そのうち「あれ!?」という瞬間に、全貌が3Dで明らかに立ち現れます。
谷沢先生がおっしゃったように書き手の父は、「眼(め)の人」であります。自分に視えているその有様を、読み手にもハッキリと見せるために、ゆっくり時間と手間をかけてまるで物語の様に組み立ててみせているのです。そして、組み建つ建築の土台と材料になるものは、長年の勉学と読書と体験知で培った父の「知」の蓄積であります。それが膨大な量の言葉となって父を動かし書かせたのだと思います。正に一刻を惜しんで……。
父が今、生きていたら日本のこの状況をどう観るだろうか、と自分に問うことはしばしばあります。父に見えていてエッセイの中で、何十年も前に問うていた、あるいは柔らかく警告していた「寒気がするような」ことが現実になりつつあるのを、神様は父に見せたくなかったのでは、とも思えるのです。しかし父は、光明を捉える人です。答えはいつも明るい方に面を向けた者に、見えるものなのでしょう。

生涯、明(あか)らかなるもの、晴れやかなるものを愛した父は、自分の精神もまたその様であることを願ったためにか「嘘」というものを一度もついたことがありませんでした。
私はこの事実に、父の亡き後暫くして突然、ハタと気付きました。そして母にも確認しました。
「分からないことを分かったふりをしない」「分からないことをごまかさない」という「知的正直」であることを常に他人にも奨めた父でしたが、本人は実生活の、実に大から小に至るまで、自分にも他人にも「偽わる」ことが無かったのです。
                     「はじめに」早藤眞子(渡部昇一長女)より

当今、エッセイストの最たるは、と、改めて眼を凝らすとき、すくなくとも三人の姿を、したしみぶかく、認めうる。すなわち、司馬遼太郎、山本七平、そして、渡部昇一である。私は、ながらく、この三幅対を、なつかしみの情をもって、愛読してきた。じつは、この、エッセイ、という微妙なジャンルに、数まえることのできる筆者が、たやすくは、見あたらないのである。書きすすめるのに難かしいスタイルであり、かなりの用意と心くばりを、必要とするからであろうか。
そもそも、エッセイ、とはなにか。これは、論文ではないのである。或る限定された材料や、専門的な事柄を、その分野においてだけ有効なように、求心の方向で書きしたためた場合、それは、謂わゆる知の世界への贈り物として、有意義であることに間違いはない。しかし、そこには、誰も彼もの興味を誘うにたる、という要素が欠けている。エッセイ、を成りたたせる要件の第一は、万人に共通な関心事、そこへ直入するテーマ設定である。
とすれば、すべての人が面白がる話題はなにか。それは、ただひとつ、人間、である。砕いて呼ぶなら、人の心、である。エッセイは、人の心、を、描き伝えるのを、本来の使命とする。(略)
昭和四十八年七月、『諸君!』に「文科の時代」が掲載された。一般読書人にしたしみやすい、身近な媒体への初登場である。このたぐいまれな異才に目をつけた、文藝春秋の編輯陣、なかんづく安藤満、川又良一、堤堯らの成功である。これから足かけほぼ三年、不羈奔放のいきおいで、読者の肝をつかむような、多彩なエッセイが書きつがれる。すなわち、『文科の時代』(49年)『腐敗の時代』(50年)『正義の時代』(52年、いずれも文藝春秋)の三部作によって、エッセイという分野ならではの、極上酒がかもしだされたのである。この時期を、私は、ひそかに、エッセイ史における渡部昇一の時代、そう名づけて、心おどりを楽しんだのであった。
          「解説」(正義の時代)谷沢永一(関西大学 元名誉教授)より

目次:

はじめに 早藤眞子(渡部昇一長女)

T
天皇について 国体は何度も変った
戦後啓蒙のおわり・三島由紀夫 
小佐野賢治考

U
文科の時代 日本民族の可能性
腐敗の効用 ある時代への葬送曲として
甲殻類の研究
労働について 乞食と奴隷の間

V
なぜ英国病が生れたか
英語教育考 亡国の「英語教育改革試案」
新聞の向上? 楚人冠「最近新聞紙学」を読む
歴史と「血の論理」

解説 谷沢永一(関西大学元名誉教授)

【著者紹介】

渡部昇一(わたなべ・しょういち)
1930年10月15日、山形県生まれ。上智大学大学院修士課程修了。ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。Dr.phil.(1958)、Dr.Phil.h.c(1994)。上智大学教授を経て、上智大学名誉教授。その間、フルブライト教授としてアメリカの4州6大学で講義。専門の英語学のみならず幅広い評論活動を展開する。1976年第24回エッセイストクラブ賞受賞。1985年第1回正論大賞受賞。英語学・言語学に関する専門書のほかに『知的生活の方法』(講談社現代新書)、『古事記と日本人』(祥伝社)、『渡部昇一「日本の歴史」(全8巻)』(ワック)、『知的余生の方法』(新潮新書)、『[増補]決定版・日本史』(育鵬社)、『決定版 日本人論』『人生の手引書』『魂は、あるか?』『終生 知的生活の方法』(いずれも扶桑社新書)、『新・知的生活の方法 知の井戸を掘る』(青志社)などがある。2017年4月17日逝去。享年86。

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